2013年10月28日月曜日

「ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法」のウソ、ホント

タイトルを変更しました。
(新)「ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法」のウソ、ホント
(旧)クラミジア感染が酷いことになっている件
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日本でピルの利用者にはコンドームの使用を推奨することになっており、
以下の文章が冊子に書かれています。

この薬は、HIV感染症(エイズ)および他の性感染症(たとえば梅毒、性器ヘルペス、淋病、クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、膣トリコモナス症、B型肝炎など)を防止するものではありません。これらの感染防止にはコンドームを使用することが大切です。

この文章を受けて、

ピルでは、性感染症(STD)を予防できません。性感染症予防には、コンドームを使用することが必要です。

などの啓発が行われています。
コンドームに言及する後段は日本独特ですが、前段は日本も欧米も同じです。
欧米の啓発は、以下のような表現です。

They do not protect against HIV infection (AIDS) and other sexually transmitted diseases.
Birth control pills do not protect you against any sexually transmitted disease,

including HIV, the virus that causes AIDS.
The Pill will not protect you against sexually transmitted diseases.


前段部分については、日本と諸外国に大差のないのがわかるでしょう。

言説は社会的文脈の中で、異なった意味を持ちます。
ピルとSTD予防についての言説は、まさにその典型とも言えるものです。
ピルが普及している社会では、
「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません」
はどのように受け取られるでしょうか?
STD不安を持つピルユーザーとパートナーは、予防の方法を相談します。
相談を受けた医療者は検査を提案し、必要があれば治療するでしょう。
ただ、それだけのことです。
「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません」は、
ピルでの避妊を忌避する理由になりません。
欧米の未婚ピルユーザーの間では、
ピルとコンドームのデュアルメソッドが取られることも少なくありません。



 19歳以下の年齢層では、約30%弱のピルユーザーがコンドームを併用しています。
 STDフリーが証明されていないとか、パートナー関係が不安定であるとかの理由もありますが、
避妊の切実度がより大きいことが関係しています。
(デュアルメソッドは2つの避妊法の組み合わせの意味です。
避妊にピル・STD予防にコンドームは、
デュアルメソッドの本来の意味ではありません。)
ピルが普及している社会では、
「ピルでは、性感染症を予防できません」との言説が、
ピル利用を抑制する効果はほとんどありません。

ところが、日本のようにピルでの避妊が普及していない社会では、
別の意味を持ってきます。

「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません。性感染症予防には、コンドームを使用することが必要です。」

この言説が発するメッセージは、
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法
となります。
1999年ガイドラインの作成者がピルの普及を阻止するために頭を絞って考え出したのが、
ピルは欠陥避妊法とのメッセージを伝えるコピーでした。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法
このメッセージはさらに一人歩きを始めます。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法だと考えれば、
ピルユーザーが増えれば性感染症が蔓延するのではないかとの憶測が広がります。
※ツイッターアカウント9Save は、
1年以上にわたり現在も毎日このフレーズを呟いています。
このフレーズは他のロボットにパクら拡散しています。

さらには、ピルユーザーはふしだら女との偏見まで生み出します。
(→広がる偏見「ピルはビッチな薬、ヤリマンの薬」についてのツイート

ところで、ピルは欠陥避妊法であると思い込ませるためには、
性感染症予防のためにはコンドームが有効との前提が必要です。
もちろん、コンドームは性感染症予防に有効です。
しかし、最も有効な方法であるのか、あるいは唯一の方策であるのか、については検討が必要です。

性感染症の一つにクラミジア感染症があります。
このクラミジア感染症は日本人の5%(20人に1人)が感染するとの推測があります。
クラミジア感染の広がりはSTDに対して無防備な性交渉がなされていることを示す指標ともなります。
上のフランスの避妊法利用グラフを見て下さい。
最もコンドーム併用率の高い年齢層でも30%弱です。
ピルだけで避妊しているカップルはゴマンといます。
しかし、フランスで性感染症が蔓延しているわけではありません。

むしろ、日本の方がクラミジアは蔓延しているのです。
コンドームがクラミジアの予防に有効だとすれば、
コンドームの使用率が世界有数の日本でクラミジア感染率が高いのはなぜか、となります。
考えられるのは、
①日本人はセックスパートナー数がやたら多い。
②日本人はコンドームを正しく使っていない。
の2つです。
①については、信頼できる比較データがありませんが、
おそらく大きな差はないでしょう。
②についても信頼できる比較データがありませんが、
これも大きな差はないでしょう。
たしかに、コンドームが正しく使用されていない現実があります。
しかし、考えてみるとフランスではコンドームを使用しないカップルが過半数以上いるわけですから、
トホホ群の比ではありません。

日本とフランスの違いは性感染症戦略の違いではないかと考えます。
下の図は、日本のクラミジア感染の年齢分布です。



グラフは2012年のデータですが、傾向は時代をさかのぼっても同じです。
この図から、クラミジア感染は20代をピークに減少するのがわかります。
また、30歳を境に男女の罹患率が逆転します。
 つまり女性は25歳を境にして急激に罹患率が低下するので、
男女の罹患率逆転が起きるのです。
なぜ、女性では25歳を境に罹患率が急激に低下するのでしょう。
その理由は恐らく妊娠出産と関係しています。
妊娠して産婦人科を受診してはじめてクラミジア感染が発覚するケースは少なくありません。
女性の産婦人科受診が25歳以後に多くなることと、
クラミジア罹患率の低下はリンクしているのではないかと考えます。
これが日本の現実だとすると、
日本のクラミジア感染率を下げるには早期の検査と治療が有効な方策となります。
ピルの普及している国でクラミジア感染が広がらないのは、
検査と治療で低年齢層のクラミジア感染率を低く抑えているからではないかと思います。
 上のツイートは2013年10月28日のツイートですが、
感染症との戦いはまさに戦争なのです。
性感染症にはワクチンという武器は使えません。
我が大本営はコンドームという武器で戦えと言います。
しかし、竹槍の使い方をいくら訓練しても戦争に勝てるとは思えません。
性感染症との戦争では、男の戦い方と女の戦い方が別ではないかと考えています。
ピルユーザーにはコンドームの使用が強く推奨されています。
男性以上に、です。
奇妙だと思いませんか?
ピルユーザーは女性です。
ピルユーザーがコンドームを使用するわけではありません。
大本営のオジサンの言に従っても性感染症戦争に勝てないなら、
女性は検査と治療という武器を考えるべきだと私は思います。

ピルが広く普及している国で性感染症感染の拡大が抑制され、
ピルがほとんど普及してない日本で性感染症が拡大しています。
この事実はピルが普及すれば性感染症感染が拡大する、
との考えが妄想に過ぎないことを示しています。
日本のピル政策はこの妄想に呪縛され続けています。
しかし、その結果は何だったのでしょう?
性感染症の拡大が抑制されることはありませんでした。
私たち女性は性感染症罹患のリスクに脅かされ続けています。
それだけではありません。
ピルユーザーと性感染症を結びつける偏見が蔓延ることになりました。
また、ピルは欠陥避妊法との偏見が生み出され、
女性の選択を歪めています。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法ではありません。
欠陥性感染症対策が性感染症の抑制に失敗しているだけのように思えます。





※不特定のパートナーと性交渉があるなら、
性感染症予防のためにコンドームを使うべきです。
もし、特定のパートナーとの性交渉ならば、
コンドームでの予防と検査・治療での予防のどちらかを選択することができます。
(もちろん、どちらも選択することを妨げる理由はありません。)
コンドームでの予防はコンドームを正しく使用しても失敗があるように、性感染症予防も失敗するリスクを持ちます。
検査・治療での予防は、お互いが不倫をしない限り、
明らかに有効性の高い合理的な予防法です。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

米国でのイエローキャブに始まり欧州だけでなく今ではアジアの観光地でも日本女性が一番簡単に口説けると広まってしまった現状は現地在住の日本人達が男女問わず悔しい思いをしていると聞いています
世界と比較すると男性のナンパする文化が乏しい為にナンパで浮かれる女性が多いのかとも思いますが本質は受身で押しに弱いことにあると思っています

性感染症の問題も本質は同じで男性に嫌われたくないとか雰囲気を壊したくないなど気を使い過ぎてコンドームを付けないことに強くNOと言えない女性が多いからではないかと思っています

匿名 さんのコメント...

AVの普及によりオーラルセックスが正常性交のように普及しているので
性器と性器の感染だけでなく口から性器、性器から口への感染が増えていること
また、征服感を優先させるような男性はコンドームを付けたがらないだけでなく
不特定多数の女性と関係を持つので結局は感染拡大してしまう
更に、その様な男性に簡単に口説かれてしまう女性は他の男性からもアプローチされやすいので
それが又感染源となり性交回数が突出して高い一群がピンポンパン感染して感染の温床になっているのではないかと考察しております

結局の所、特定のパートナー以外とのオーラルセックスを控えることと
避妊具と呼ぶにはあまりに脆弱なコンドームを性感染予防具として男女問わず再認識する必要があるでしょう