2013年9月22日日曜日

海外での治療目的ピル利用

バイエル薬品が公表した文書によるとヤーズの血栓症発症率は10万人あたり60人で、
これは日本の妊産婦の発症率をはるかに超える異常な数字となっています。
欧米のヤーズユーザーの発症率と較べても突出した数値です。
死者まで出ているのですから、日本のヤーズで異常に高い発症率となっている理由を早急に解明する必要があると書きました。
ヤーズの異常に高い血栓症発症率は、治療薬として処方されていることと関係するのではないか、と私は考えています。
もしそうであれば、ヤーズだけでなく、程度の差はあれルナベルでも同じ問題が生じているでしょう。
避妊目的がないのに治療目的などでピルが使われることは、
海外でもあります。
何がどう違うのか、見てみることにしましょう。

海外でのピルの治療目的利用について見る前に、
海外では全てのピルが避妊薬であることを確認しておく必要があります。
Yaz/Beyaz(日本のヤーズ)の添付文書をもう一度紹介しておきましょう。

● Prevent pregnancy.

● Treat symptoms of premenstrual dysphoric disorder (PMDD) for women
who choose to use an oral contraceptive for contraception.

● Treat moderate acne for women at least 14 years old only if the patient
desires an oral contraceptive for birth control.

● Raise folate levels in women who choose to use an oral contraceptive for
contraception.


*************************************************** 
(翻訳)

妊娠防止

避妊に経口避妊薬の使用を選択する女性に対して、月経前不快気分障害(PMDD)症状の治療。

バースコントロールのために経口避妊薬を望む場合、14歳以上の女性の軽度のニキビ治療。

避妊に経口避妊薬の使用を選択している女性の、葉酸レベルの回復。
 

ヤーズの効能として認可されているのは避妊効能です。
避妊目的がない女性にヤーズを処方できない書き方になっています。
これは他のピルについても同様です。
では、誰のどのような判断で、避妊目的を持たない女性にピルが処方されているのでしょう?
典型的な診察室のやり取りを再現してみましょう。



A .医療者が非避妊目的利用を勧めない原則


女性: 生理痛がひどいのでピルをもらえませんか?

プロバイダー(医師など): ピルは避妊薬ですよ。
避妊にピルを使うつもりですか?
女性: いいえ、今はその必要がないんです。


プロバイダー: 生理痛のためだけにピルを飲めば、
血栓症など副作用リスクの方がメリットより大きくなるのよ。
だから、ピルは止めておきましょう。



B .現避妊ユーザープラス


女性: 以前は避妊にピルを使っていたことがあるし、
これからも避妊の必要があればピルを利用すると思うの。
たまたま現在、避妊の必要がないと言うだけなんですけど。


プロバイダー: わかったわ。
あなたは、「避妊にピルを選択する女性」と見なせるわね。

女性: だったら、ピルを処方してもらえますね。

 
プロバイダー: 処方しますよ。
でもね、副効果期待は原則として現在ピルで避妊している女性が対象なの。
だから、避妊目的使用よりもリスクを詳しく検査しましょう。


女性: そうですよね。そうすれば安心できます。
それに、生理痛で血栓症になったら、シャレになりませんものね。


C .選択肢の提示
 
プロバイダー: 検査で問題がなければピルを出しますが、
血栓症リスクの低いミニピルにしましょう。


女性: いえ、一度ミニピルは試したことがあるんですけど、苦手なんです。
普通のピルにして下さい。


プロバイダー: わかったわ。
では血栓症リスクの低い第2世代のピルにしましょう。
女性: できたら超低用量のピルを希望なんですけど。


プロバイダー: 避妊目的でピルを飲む時も、最初は低用量の1相性ピルなのよ。(※イギリスのガイドラインなど)


女性: あ、そうなんですか。



 D.服用上の注意

 
プロバイダー: 必ず、生理初日から服用を始めて下さいね。

女性: え、どうして?

プロバイダー: 卵巣からのエストロゲン分泌を最小限にするためよ。

女性: ピルが超低用量でも、卵巣からエストロゲンがたくさん出ていたら意味ないですものね。

プロバイダー: 知っていると思うけど、これが血栓症の初期症状なの。
該当する症状があれば、必ずすぐに受診するようにね。



E .副作用に対する配慮が信頼の源泉
 
女性: 以前、ピルを服用していたことがあるから知ってますよ。
でも、血栓症なんてめったにないですよね。

プロバイダー: そう。頻度は低いの。
でも、血栓症を発症してしまった人にとって確率が低いってことは、意味がないことなのよ。
むしろ、誰にでも可能性があると考えることの方が大切よ。


女性: なるほどね。確率が低いなどと強調しないのは、そのためだったんですか。


プロバイダー: 患者さんを守るのが使命ですからね。

女性: ますます信頼できるようになりました。

以上の会話は架空の会話です。
しかし、ピルの認可条件が避妊ですから、大筋では上の様になります。
上の会話内容を少し解説しておきます。

A .医療者が非避妊目的利用を勧めない原則について

ピルを非避妊目的に使用すれば、リスクがメリットを上回ることは医学常識です。
医療関係者が避妊目的のない女性にピルを奨めることはあり得ません。
医師等はこの事実を患者にしっかり伝えています。

一方、日本ではどうでしょうか。
これはツイッター上におびただしく流布しているツイートです。
製薬会社の広告部が考えたコピーでしょうか(ということにしておきます)。
責任のない個人が自身の感想・意見として述べるのであれば許されるかもしれません。
しかし、私の感覚、そして欧米の感覚では、医療者がこれを口にすることは無責任です。
エビデンス的に確固とした裏付けのある内容とは言い難いし、
何よりも重篤な副作用の出る女性に対して責任が負えないからです。
生理痛があればピルを飲めと言う内容ですが、
血栓症が生じあるいは命を落とすことがあっても、
なお生理痛が軽くなるならピルを飲むメリットの方が大きいとは考えられないからです。
日本の医療関係者の倫理観は、世界からかけ離れています。

B .現避妊ユーザープラス

Yazの効能の訳でchooseを「選択する」と訳しました。
chooseは、「選択する」とも「選択している」とも訳せます。
私が「選択する」と訳したのは、一つには英語のニュアンスです。
chooseが使われなかったら、つまり、
・・・who use an oral contraceptive for contraception.
だと現在避妊目的でピルを服用している女性とのニュアンスが強くなります。
わざわざ、
・・・who choose to use an oral contraceptive for contraception.
としているのは、「現在」というニュアンスを弱めるためです。
2つめの理由は、避妊目的でピルを服用し血栓症の副作用が現れなかった女性は、
避妊目的がなくなってから後に服用を続けても、
血栓症のリスクはそれほど大きくないからです。(発症は服用初期に偏る)
3つ目に、以上のような理由を受けて、実際の医療現場では、
避妊目的ユーザーの意味はやや広く解釈されている現実があります。
以上を踏まえ、「選択する」と訳し、
プロバイダーが女性を避妊目的ユーザー認定する設定にしました。

C .選択肢の提示

実際に、現在避妊の必要がない女性に対しても、
避妊にピルを使用していた経過や意向があればピルは処方されています。
ただ、現在避妊の必要がない女性に対しては、
より慎重な対応を取るのが普通です。
幅広い副効果がありリスクの低いミニピルが提案されることは珍しくありません。
プロバイダーは女性の希望も取り入れながら、
よりリスクの少ないピルを提案します。
ルナベル・ヤーズという治療専門ピルを作ってしまった日本では、
治療目的で服用するにしても選択の余地が極端にない状態です。


D.服用上の注意

日本には、避妊目的と治療目的ではピルの服用法が異なると言い張る人がいます。
その内容についてはまたの機会に検討することにします。
日本以外の国の全てのピルは、避妊薬です。
避妊目的と治療目的ではピルの服用法が異なるという主張が、
日本のローカルルールであることは明らかでしょう。
私の知る限り、治療目的だけのピルユーザーには、
むしろオーソドックスな服用法が奨められます。
血栓症の兆候についても、より丁寧な確認がなされています。
治療目的の服用法ではリスクがメリットを上回るという認識があるからでしょう。
しかし、日本の医療者にその認識があるとは思えません。
ヤーズのとてつもない血栓症発症率と関係しているのではないかとおそれています。

E .副作用に対する配慮が信頼の源泉

「ピルの副作用なんて、めったにないのよ。平気、平気。」
日本でピルの普及に熱心な産婦人科医の中には、
このように言いたげな発言が散見されます。
ピルの副作用リスクを受け入れるかどうかは価値観の問題であり、
医療者が押しつけてはならない問題です。
特に避妊目的を持たないピルユーザーについては、
医学的にはデメリットがメリットを上回ります。
避妊目的を持たないピルユーザーに、
「ピルの副作用なんて、めったにないのよ。平気、平気。」
と伝えることは許されません。
避妊目的を持たないピルユーザーに対しては、
よりしっかりとリスクを伝える必要があります。
日本でピルが普及しないのは、
医療者がメリットとリスクをきっちり伝える勇気を持たないからだ、
と私は考えています。
ピルの治療薬化は、メリットとリスクをきっちり伝えにくい条件を作り出しています。


「ピルとのつきあい方」のスタンス

非避妊目的でのピル使用では、メリットよりデメリットの方が大きくなる。
これは医学常識なので、どの国でもピルの服用は原則として避妊目的に限定しています。
日本の産婦人科医もよほど不勉強な医師でない限り知っていることでしょう。
しかし、日本では「ルナベル・ヤーズの錬金術」がまかり通り、非避妊目的使用ではメリットよりデメリットの方が大きいことを言わないことになっているようです。
はては、さも何かのサプリのように、「生理痛にはピル」と言うのがトレンディらしいのです。
トレンディ路線のNPOに言わせると、「1999年から頭の更新ができていないピルとのつきあい方」となります。
事は命や健康にかかわることです。
「ピルとのつきあい方」は、ピルが普及しピルの売上げが伸びることには全く関心がありません。
普及推進と較べられないほど大切なことは、
一人のピルユーザーの命と健康を守ることです。

とても、重要な指摘だと思いました。
「自分の問題として考えること」なしにピルは定着するものではありません。
「自立的ピルユーザー」を提唱する所以です。
欧米ではピルが避妊薬であるために「自立的ピルユーザー」が育ち、
治療目的ピルユーザーもまた「自立的ピルユーザー」となっています。
日本はまさにその逆ではないかと感じられます。

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