2013年7月8日月曜日

ピルと抗生物質(非酵素誘導抗生物質)

※この記事は、酵素誘導抗生物質であるリファンピシン(リファンピン)を除く抗生物質・抗菌剤について書いています。

ピルユーザーは蚊帳の外

ピルユーザーに渡されることになっている「服用者向け情報提供資料」という冊子があります。
この「服用者向け情報提供資料」には、飲み合わせ(薬品相互作用)については、
以下のような簡単な記述があるだけです。
「・セイヨウオトギリソウを含有する食品はこの薬に影響しますので、控えて下さい。
・他の医師を受診する場合や、薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を飲んでいることを医師または薬剤師に告げて下さい。」
「服用者向け情報提供資料」は必ず渡されているわけでもないし、
渡されても読まれているわけではありません。
読んだとしても、飲み合わせに注意する薬があると認識されるかは、
微妙な気がします。
もっとも、相互作用をチェックするのは専門家の役割なので、
ピルユーザーは専門家に任せればよいとの考える事もできます。


添付文書の相互作用記述


相互作用については、医師・薬剤師の役割が重要になります。
医師・薬剤師はというと、添付文書の記述に従うことになるでしょう。
そこで、ピルの添付文書を見てみましょう。
添付文書には、テトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質について、
「本剤の効果の減弱化及び不正性器出血の発現率が増大するおそれがある。」「これらの薬剤は腸内細菌叢を変化させ、本剤の腸管循環による再吸収を抑制すると考えられる。」との記述が見られます。
ピルの添付文書は、腸内細菌叢に影響を及ぼす抗生物質としてテトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質をあげていますが、
この系統の抗生物質に限定されるのでしょうか。
この点については、疑問が残ります。
「日経DI」(2007年11月「やってみよう!一歩進んだ抗菌剤の服薬指導」)では、テトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質に限定せずに、抗菌剤全般と読み替えています。


抗生物質(非酵素誘導抗生物質)とピルの相互作用は否定される方向なのだが・・・


2010年、WHOはMedical Eligibility Criteria for Contraceptive Use(3rd edn)を公表しました。イギリスではそれを受けて翌年、Drug Interactions with Hormonal Contraceptionがまとめられました。新しいガイドラインについての当時の記事です。
このガイドラインでは、酵素誘導抗生物質以外の抗生物質では、抗生物質がピルの避妊効果を低下させるエビデンスはないとし、他の避妊法の併用などは不必要としました。
つまり、テトラサイクリン系抗生物質やペニシリン系抗生物質も含めて、
非酵素誘導抗生物質はすべて避妊効果に影響しないとされたのです。
日本の現在のガイドラインがもし改訂されるなら、
WHOやイギリスのそれを踏襲することになるでしょう。
しかし、このガイドラインは医療関係者に評判がよくありませんでした。
上記の記事には、医療関係者のコメントが寄せられています。
中には新ガイドラインをボイコットすると宣言するコメントもあります。

抗生物質相互作用の難しさ


酵素誘導薬品の相互作用は、わかりやすさがあります。
酵素誘導薬品を服用すると、
ほぼ例外なく体内の代謝酵素が増加しますから、
多かれ少なかれ服用者は誰でも影響を受けます。
ところが、非酵素誘導抗生物質の場合は、
誰にでも影響が出るわけではありません。
非酵素誘導抗生物質の相互作用は、
非酵素誘導抗生物質によって腸内細菌叢が影響を受けるという
一種の「副作用」によるものです。
非酵素誘導抗生物質で腸内細菌叢が影響を受けると、
しばしば下痢の症状が現れます。
しかし、非酵素誘導抗生物質を服用しても、
下痢の副作用が出る方はまれです。
非酵素誘導抗生物質の「副作用」の出方には、
個人差があります。
さらに、同一人であっても腸内細菌の耐性菌ができると、
「副作用」が出なくなったりします。

ピルユーザーを守る非酵素誘導抗生物質の対処法


非酵素誘導抗生物質の相互作用は否定される方向です。
日本で非酵素誘導抗生物質の相互作用を否定するガイドラインが作られても、
非酵素誘導抗生物質の相互作用に警戒するように「ピルとのつきあい方」は勧め続けます。
たとえ、数百人に一人、数千人に一人の確率であっても、
非酵素誘導抗生物質の「副作用」が出るユーザーがいるかもしれない、
と考えるからです。
それに、そうすることでピルユーザーにとって大きなデメリットはないのですから。
ピルユーザーは、非酵素誘導抗生物質を服用する際には、
「副作用」が出ると想定して警戒すればよいのです。
数日間様子を見て下痢も不正出血もなければ、
腸内細菌はダメージを受けなかったと判断して警戒解除すればよいだけです。

「ピルとのつきあい方」は頑迷なサイトです。

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