2013年6月29日土曜日

ルナベル・ヤーズの錬金術

イギリスのピルの値段についてツイートしました。

リンク先は医療関係者向けのプレゼンテーション資料を保存したサイトです。
イギリスではピルの処方をするのは産婦人科医だけではありません。
日本でいえば保健師さんもピルの処方をしています。
地域でピルの処方をしている医療関係者向けのトレーニング資料ですが、
ピルは若い女性向けの避妊法であるとか、
種類の選択が重要とか興味深い内容となっています。
ピルには相性があるので相性にあわせてと選ぶと、
「ピルとのつきあい方」は14年前から書いてきました。
それと重なる内容が示されています。
ピルの選択と関係してピルの価格も示されているのです。
ツイートしたようにNorinyl1というピルは日本円換算で1シート110円です。
Norinyl1はノリニール1と読みます。
日本ではシンフェーズとノリニールという3相性低用量ピルが認可されましたが、
そのノリニールと名前は同じでノリニール1となっているのは1相性のノリニールという意味です。
このNorinyl1はオーソM・ルナベルと成分用量がまったく同じです。
全く同じ成分用量のピルの価格を図にしてみました。
図にソフィアAを入れたのは、中用量ピルに分類されるピルですが、
オーソM・ルナベルと同じ黄体ホルモンの似たピルだからです。
(※Norinyl1には、Norinyl1+35とNorinyl1+50の2種類がある。この記事のNorinyl1はNorinyl1+35について書いている。)



図を見るとNorinyl1とソフィアAは、ほぼ同じ薬価になっているのがわかります。
つまり、百数十円の薬価となっており、その中にコストと利益が含まれています。
オーソM・ルナベルはNorinyl1と同じピルなので、Norinyl1とコストはほぼ同じと考えられます。
コストにNorinyl1やソフィアAなみの利益を上乗せしたものが、
オーソMやルナベルの適正価格と考えられます。
つまり、表に示した4製品の適正価格は皆ほぼ同じで、百数十円となります。
ところが、オーソM・ルナベルの実売価格・薬価は、それぞれ約2600円と約7000円です。
適正価格との間には大きな差があります。
それを政策プレミアムとしてモザイクで示しました。


ルナベルの薬価6990円は、政府が政治的判断で決めた政治薬価です。
適正価格との差が6800円にもなります。
つまり、ルナベルの薬価の大部分は政策プレミアムからできているのです。
政府がルナベルに法外な高い薬価を設定したのは、
2つの目的からだったと推測できます。
ピルの値段が下がってはピルが普及してしまいます。
ピルの普及を阻止するためには、ピルの価格が下がらないようにする必要がありました
7000円の薬価を設定すると個人負担額は2100円程度です。
自由診療のピルに価格の標準を作ることを意図したのでしょう。
実際、保険適用でないピルの価格はこの2100円程度を指標とした物になっています。

もうひとつの狙いは、業界の懐柔でした。
原価が100円以下の薬を約7000円で販売すれば、
売上のほぼ全てが業界の利益となります。
ケタ違いの利益が業界に分配されることになったのです。
ルナベル認可後、ピルは避妊だけでない、子宮内膜症や月経困難症にも効果があると啓発されることになりました。
ピルは避妊などと言うしみったれた効能の薬ではなく、「ライフ・デザイン・ドラッグ」だというわけです。
脱避妊薬路線を誘導するのに政策プレミアムが利用されたのです。

ルナベル認可前の2004年、「ピルとのつきあい方」は、
ルナベルの薬価は中用量ピル並の「適正価格」以外あり得ない、
との主張を展開しました。
もし、適正価格150円のルナベルが実現していれば、
オーソMはもちろん他のピルも皆150円に近づいていったでしょう。
イギリスは、ドイツは若者のピルが無料だと羨まなくてすむ国になっていたのです。
治療目的でピルを服用する女性の経済負担も極小にすることができたのです。


「ピルとのつきあい方」は2004年から異端児になりました。(参照ピルユーザーの願いが実現しない仕組み)
私は、間違った主張をしたから異端児になったのではなく、
まっとうな主張をしたから異端児になったのだと考えています。




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