2013年5月18日土曜日

窒息するHPVワクチンとピル


直接のきっかけ

5月16日、厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会「副反応検討部会」が開かれました。
そのニュースです。



このニュースには書かれていませんが、桃井真里子部会長は全員に意見表明を求めましたが、発言しない委員もいました。そして、全員一致で継続が決まりました。
このニュースはある意味でショックでした。
ただ単に継続という結論が出されただけならば、それほど驚きません。
継続という結論にも一理あります。
しかし、中止という結論にも一理あるのです。
子宮頸がんワクチンは緊急性が高いとは言えません。
未解明の点があるならば、この際一旦中止して徹底的な調査をするという考えも成り立ちます。
現在までに報告されている副反応について、必ずしも精査されていないのが現状です。
海外のデータよりも高い頻度で重篤な症状が出ている可能性も否定できません。
データの正確性や信憑性は精査してみないとわからないことなのに、
データに問題があると決めつけるのは予断です。
命に関わる問題を考える際に、予断を排することは鉄則だと思います。
予断を排して考えれば、万が一にも想像外の事態が生じているかもしれないと考え得る状況があります。
そうであれば、中止を主張する委員が一人くらいいてもよかったでしょう。
ところが、そのような意見表明は一人もなかったことがショックなのです。
この委員会のもとで、ワクチン接種が継続されることに同意できなかったのです。
※多様な価値観


何がワクチンを窒息させるのか

私はこれまで、子宮頸がんワクチンについていくつかの記事を書いてきました。
よろしければ、子宮頸がんのタグをクリックしてお読みください。
これまでの記事で、ピルと子宮頸がんワクチンの類似性について語っています。
この両者には多くの類似点がありますが、
どちらも価値観が関係する点で共通しています。
ピルがなくても避妊は出来ます。
ピルを選ぶかどうかは価値観の問題です。
ワクチンがなくても子宮頸がんは防げるかもしれないし、
子宮頸がんにならない人の方が大多数です。
それでもワクチンを選ぶかどうかは価値観の問題です。
このことがどれほど理解されているのか、
疑問に思うことが多々ありました。
一つ例を挙げましょう。
先から先の結論まで決まっていて、
その結論にそって啓発されるべきことのようなのです。


子宮頸がん征圧をめざす専門家会議の実行委員の先生が、
ワクチン接種場所について話をされました。
産婦人科での接種が1割に過ぎないと、
うらみがましく長々と話をするのです。

保存ページ

子宮頸がん征圧をめざす専門家会議のサイトには、
子宮なんでも辞典  >  月経痛と月経困難症の悩みありますか?
などという親切なページもあります。
そして産婦人科受診を奨める内容です。

保存ページ

極めつけ。

子宮頸がん征圧のためには産婦人科受診が重要だ、はその通りかもしれません。
それならそれでそのように書けばいいでしょう。
ところが、そろいもそろって回りくどい書き方になっています。
なぜでしょう。
あるべき行動規範は考えたり選択したりする余地のないもののようで、
いかに誘導するかに意が用いられているように思えます。

しかし、結論ありきの誘導は別のメッセージを発してしまいます。
それらの言説が「ワクチンでお金儲けしたい産婦人科病院からのメッセージ」になっていることに気づかないのでしょうか?
おまけに太鼓持が子宮頸がんへの偏見を助長する言説を振りまいていたピルの普及推進をうたう団体だったりすると、
子宮頸がん征圧よりも産婦人科誘導が本音と見られてしまいます。
さらにその団体のfacebookページを見ると、
産婦人科医がぞろぞろフォローしています。
最悪のパターンです。
このような状況はワクチンに名を借りた営業キャンペーンのメッセージにしか見えなくします。
こうして、ワクチンもピルも窒息していくのです。


自分の言葉で語ることの大切さ

子宮頸がん征圧をめざす専門家会議の実行委員の先生の話を取り上げました。
実際に子宮頸がんの患者と接しているのは産婦人科医です。
もし、産婦人科医としての自らの経験を語り、
ワクチンが小児科の病院でも場合によっては精神科の病院でもうけれる状況になっていることを産婦人科医師としてうれしく思うと語ったならば、
全然別のメーセージになったでしょう。
産婦人科業界のためにワクチンを推進しているのではなく、
女性の健康のためにワクチンを推進しているとのメッセージを発することができたのです。
しかし、現実は残念なことにことごとく逆のメッセージになっています。

ワクチンやピルが選ばれるかどうかは、
最後は価値観の問題です。
そのことに気づいているのだろうかと思うことがあります。
子宮頸がん征圧をめざす専門家会議のような組織が無意味だとはいいませんが、
もっと大事なことは自分の言葉で語る「人」です。
「ピルとのつきあい方」は個人サイトだとNPOにいつも馬鹿にされています。
でも、それはピルについてわかっていないことの証明です。
彼らは正しい一つの価値観、正しい一つの知識があると信じているようですが、
実際は100人に100通りのピルがあります。
100人が100通りのピルを語ることが大切なのです。
ワクチンについても同じ事が言えます。
ワクチンについていくら啓発しても、
ワクチンについて子宮頸がんについて語る人がいなければ、
それは枯れてしまいます。
ワクチンを一旦中止にすると復活するには大きなエネルギーが必要となります。
ワクチンがなくなれば組織は吹っ飛んでしまうかもしれません。
ワクチンがなくなっても、ワクチンが必要だと語る人。
そのような人の声でワクチンを再構築する方が、
遠回りのようで近道かもしれないと思うのです。
ワクチンやピルは権威や集団の力で普及させることはできません。
自分の言葉で語る人が必要です。
権威や集団の力で普及させようとすると、
自分の言葉で語る人がいなくなり窒息してしまうのです。

たとえばこんな形(2013.5.21追加)。
自分の言葉で語る「人」の1つの言葉は、100万人の巨大組織による啓発にも優るように思えます。

科学言説のメッセージ

ワクチンには反対運動があります。
反対運動の言説には科学的に見て間違いの言説が含まれています。
科学的間違いを指摘することは重要ですし、
そのような努力も行われています。
しかし、現在の日本の状況を見ると、
非科学的言説が支持され広がりを見せています。
なぜ反ワクチン言説が広がるのでしょうか。
反ワクチン言説は元々は個人の思いに発しています。
副作用の被害者を出してはならないとのメッセージを反ワクチン言説が発しているから、
支持されるのだと思います。
一方、ワクチン推進言説はどうでしょうか。
本来、子宮頸がんの不幸を克服したいとのメッセージとなるはずなのに、
そのメッセージが感じられないものになっています。
なぜでしょう。
それはメッセージが本来個人的なものだからです。
個人には思いがありますが、組織には「こころ」がないのです。
組織から発せられる言説でメッセージを伝えることはできなくはないのですが、
それはかなり難しいことです。
子宮頸がん征圧をめざす専門家会議のサイトについて以下のようにコメントしました。

  http://www.cczeropro.jp/kenshin/uservoice/index.html修行の足りない広告屋が作った「たまたま物語」。文体が同じで同一人物の作文と見え見えなのだが、「プライバシー保護のため、実際の体験に少し変更を加えてご紹介しています」などというギャグ付き。

このようなフィクションっぽい内容が含まれると、
真実性が揺らいでしまいます。
もう、一点。
メッセージはもともと個人的なものなので、
言説の主の言動とあわせて評価されます。
多くの産婦人科医が子宮頸がんワクチンの普及に努力しています。
そして科学的真実を啓発しようとしています。
しかし、その産婦人科医がトンデモグループを支持したり、
合理的説明のつかないピルの服用法について沈黙し続けたりしているのを見れば、
その言説のメッセージは失われてしまいます。
なぜ反ワクチン言説が広まるのか、
なぜワクチン推進言説は信用されないのか、
考えてみる必要があるでしょう。


理想主義的かもしれませんが、女性の願いが社会的合意となるような「下からの」運動が欠如していて、「上からの」啓発で普及させようとするところに、問題があるのではないでしょうか。そのような中では、安全への願いが顧慮されるかも心配です。冒頭で述べた予防接種・ワクチン分科会「副反応検討部会」の審議は、その心配を裏付けてしまいました。医師が審議し医師が啓発する現在の仕組みに代わる新しい枠組みが必要ではないか、と考えるに至ったのです。
本当に必要なのは子宮頸がん征圧をめざす専門家会議ではなく、子宮頸がん征圧をめざす市民会議ではないでしょうか。そして、専門家も一市民として発言するのであれば、大きな力になるでしょう。私たちは皆、心を持つ一人の人間です。社会を進歩させ歴史を変えるのは、小さな市民の大きな心なのです。

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江夏亜希子氏の批判(感想?)に応える(2013.5.22)











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