2013年4月4日木曜日

エナ大通クリニックの事

鬼のお気に入り

北海道にエナ大通クリニックという病院があります。
といっても、実際に行った事も見た事もありません。
当サイトには、「ピルユーザーが作るまあまあ病院リスト」があります。
エナ大通クリニックも登録された病院の一つです。
このリストに登録された病院はチェックするようにしています。
病院のサイトはどこもあまり変わり映えしません。
ところが、エナ大通クリニックのサイトには、
何か惹きつけられるものがありました。
この病院ならオススメできるのではないかと考え、
おすすめマークをつけました。
鬼のオススメは迷惑かもしれませんが。(阿修羅だったイエス 参照)

不打落水狗(中国の諺)

中国の古いことわざに不打落水狗があります。
直訳すると水に落ちた犬を打つな、です。
窮地にある人に更に追い打ちをかけるような事をしてはいけない、という意味です。
(この諺の「不」を取り逆の意味の諺もあります。)
避妊に失敗し意図しない妊娠のリスクに直面している女性は、
水に落ちた子犬のようなものです。
何とか妊娠を回避しようと、
緊急避妊をしてくれる病院を探します。
緊急避妊が必要な女性をいかに救うか各国は腐心してきました。
日本には緊急避妊薬の値段をこともあろうに高くするよう進言した医師がいるようなのです。
その結果、ノルレボの価格は15000円前後となっています。
ヨーロッパ諸国では、1000円以下だったりせいぜい3000円程度です。
ノルレボの異常価格の内幕については、
「もう一つのノルレボ物語1-12」で書きました。
その話の第9回は「良心的医師の悲鳴」です。
ノルレボの異常価格に異議を唱えた医師がいました。
それはそれで評価できる事なのですが、
口先で嘆いてもやはり15000円前後の代金となっています。
その中で、ノルレボをほぼ納入原価で提供している病院があります。
その一つがエナ大通クリニックです。
その決断にはただただ頭が下がります。

避妊で利益を求めない欧米の病院

ノルレボタイプの緊急避妊薬の値段は、
フランスで8ユーロ、ドイツで17ユーロ、イギリスで25ポンド程度です。
日本円では1000円から3000円程度です。
メーカーも病院もこの価格で赤字ではありません。
メーカーは500円でも利益が出ますから、
上記の値段でも病院は赤字にならないのです。
500円でもよい納入価格を1万円などというふざけた価格にしているのが日本です。
メーカーもメーカーなら病院も病院です。
ヨーロッパで小売価格が1000円から3000円なのですから、
病院や薬局の利益は当然それより小さい額です。
日本の価格が15000円とすると病院利益は約5000円です。
病院の得ている利益もヨーロッパより数倍高いのです。
なぜ日本とヨーロッパはこんなに違うのでしょう。
このことについては別エントリーで書く事があるかもしれません。
簡単に言うと、確実な避妊はほとんど全ての女性の抱えている問題です。
その避妊に関与すれば、ほぼ全ての女性と、しかも年齢の低いときから、
コンタクトを持つ事ができます。
避妊薬の販売で利益を上げるのではなく、
生涯にわたる健康管理が病院の役割になっています。
先進国の子宮癌検診率は軒並み日本の3倍ですが、
それはピルや緊急避妊薬の超お手頃価格によって実現しているとも言えます。

ピルの勉強会を行う病院

日本はピルや緊急避妊薬の病院納入価格が国策統制価格なので、
ピル1シートがランチ代程度の価格は実現しません。
病院が利幅を薄くしてもヨーロッパのようにはならないのです。
避妊用として普及しない価格のピルを普及させようとすると、
副効果を強調せざるを得ないという構造になっています。
このような環境の中でもがんばっている病院があります。
エナ大通クリニックもその一つです。
エナ大通クリニックの低用量ピルアドバイザーyunさんのブログは、
ぴるぶろ」です。
この病院にしてこの人あり、この人あってこの病院あり、
と感じました。
2010年05月30日のブログには、以下のように書かれていました。

ピルの仕組みを理解して
自分自身で自由に生理をコントロールして
自分の生活をもっともっと楽しめるようにしましょう
自分で出来るってところがポイントです
自立したピルユーザーになっていきましょ
もちろん、
不安がある時などはいつでもピル外来で聞いてくださいね
誰もが最初は不安ですが、大丈夫ですよ
(私が内服し始めた頃は誰も周りに内服していた人がいなかったので
いつも自分が実験台で、色々試して現在に至っています)
http://ameblo.jp/enaoc/entry-10547409489.html

当サイトは開設当初から自立的ピルユーザーになってほしいとの願いを持っていましたが、
「自立的ピルユーザー」という言葉を使ったのは新編になってからです。
それより先に、「ぴるぶろ」には「自立したピルユーザー」と書かれているのです。
感銘を受けました。
yunさんは「ぴるぶろ」だけでなく、一般向けのピル勉強会も開いているようです。

当サイトは、13年前にピルには相性があると書きました。
当時、全然理解していただけなかった事です。
ところが、「ぴるぶろ」にはピルに相性がある事が当然の事のように書かれていて、
「ピルチェン」(ピルチェンジ)という言葉まで編み出されていました。
エナ大通クリニックでは、全種類の低用量ピルをそろえているとの事です。
感慨深いものがあります。

エナ大通クリニック関係者の他のブログにもざっと目を通してみました。
私の印象は、この病院には自由がある、でした。
私は自由教の信者です。
自由が人を成長させるし、自由がいいアイデアを生み出すと考える人です。
エナ大通クリニックでは、ノルレボにピル1シートがついて1万円です。
上に、避妊で利益を求めない欧米の病院と書きましたが、
それでも赤字でピルを出す病院はありません。
エナ大通クリニックのこの価格は、ある意味でヨーロッパの病院以上です。
この病院にしてこの人あり、この人あってこの病院あり、
と思った所以です。

エナ大通クリニックの努力を忘れまい

エナ大通クリニックが行ってきた事、行っている事は、
必ず札幌の日本の女性の支持を得る事ができるでしょう。
しかし、だからといってこの病院の受診者が急増したり、
ピルユーザーが急増したりする事もないでしょう。
エナ大通クリニックは身を切る努力をしているのですが、
国策価格がある以上その努力は十分に報われません。
病院が身を切る努力をしても、
なおピルが普及する価格よりも遥かに高い価格なのです。
ただ、エナ大通クリニックとyunさんの志を忘れてはなりません。
私はそう思います。

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