2013年3月2日土曜日

緊急避妊薬適正使用を妨げる偽「適正使用」


緊急避妊の「適正使用」って別に悪くないんじゃない?
きちんと避妊せずに「後で緊急避妊すればいい」
なんて勘違いする馬鹿女ってきっといる。
そんな馬鹿女が出ないようにすることって、とっても大事。
緊急避妊が安易に使えたら馬鹿女のためにだってならないわけだし。
それに、緊急避妊が安易に使えたら、
性感染症だってきっと広がると思う。
緊急避妊はレイプとかコンドーム破損とかやむを得ないときに限定すべきで、
乱用防止のために「適正使用」を徹底するのが、
どうしていけないのかわからない。

「適正使用」推進の論理を平たく言うとこのようになるでしょう。
今、このブログを読んでいる読者の皆さんは、
どのようにお考えになるでしょうか?
多分、多くの方は「賛成」だったり「理解できる」というお考えではないかと思います。
というのは、この「適正使用」推進論に漠然とした違和感を感じる人はいても、
真っ向から反対している人を見たことがありません。
私は「適正使用」推進論に真っ向から反対です。
100万人の人に白眼視されようとも反対ですし、
100年経っても反対の気持ちは変わらないでしょう。
なぜ、私が反対なのか、耳を傾けて下さい。


ピル解禁前の反対論にピルを解禁すると、
馬鹿女どもの異性関係が乱れて性感染症が広がると考える人がいました。
実際にそのようなことは起きません。
そのようなことが起きると考えるのは、
おじさんの妄想なのです。
「適正使用」推進論も同じ妄想を繰り返しています。
仮に緊急避妊に頼ってリスキーな性交渉を持つ女性がいたとします。
彼女はどのように緊急避妊薬を服用すると思いますか?
毎週緊急避妊薬を飲むのですか?
緊急避妊薬を無償で配っても、
そのような飲み方をする女性はいません。
つまり、「乱用」という心配自体が妄想の産物に過ぎないのです。
実際、多くの国で緊急避妊薬は安価で、
しかも手軽に買える薬としてドラッグストアで販売されています。
そのどの国でもそのような意味での「乱用」が生じなかったことは、
エビデンスとして上がっています。
ピル解禁に反対したおじさんの妄想は、
今まだ日本では健在です。
「乱用」妄想はピルを40年にわたって封印してきた国ならではの考えです。


諸外国では緊急避妊の敷居をこれでもか、
これでもかと低くしてきました。
そのわけは「乱用」どころか、
緊急避妊を必要としている女性が緊急避妊にアクセスしないからです。
どこの国にも性に関する知識のなさから、
望まない妊娠をしあるいは中絶をする女性がいます。
この女性達の少なくない割合は、
月経が来なくて始めて妊娠の心配をし始めています。
緊急避妊は性交渉から3日以内にアクセスする必要があります。
この彼女たちに3日以内に緊急避妊にアクセスしてもらうのは、
とてもむつかしいことなのです。
女性が性についての一定の知識を持つことを前提に、
緊急避妊は成り立ちます。
学歴が高いほど緊急避妊の利用率が高くなるのはそのためです(参照アメリカの緊急避妊)。


私からみると、緊急避妊の「適正使用」イコール「乱用防止」とする考えは間違いです。
緊急避妊を必要とする事態となった人が緊急避妊を利用するのは、適正使用です。
緊急避妊の不必要な人が緊急避妊を利用しないようにするのも、適正使用です。
適正使用とは、本来それを必要とする人が使用できるようにすることです。
この意味の適性使用を実現するのは、教育しかありません。
このように考える私は、
ノルレボの価格を高くすれば「適正使用」が実現するという考えが全く理解できません。


昨夜できなかった掲示板のチェックを今朝しました。
そこで見かけた2つの事例を紹介します。
1つはヤーズユーザーで3錠目を12時間飲み遅れ、
病院でノルレボを処方されていました。
いくらヤーズの避妊効能が認められていないからと言っても、
これは「乱用」に当たると思います。
もう一つの例は、トリキュラーの新シート移行の際に2錠の飲み忘れがあり、
性交渉のあったケースです。
緊急避妊を考慮してよいケースですが、
相談した薬剤師は「生理が終わって直ぐだから排卵はないと思う」と答えています。
必要ないのに緊急避妊薬が処方され、
必要であっても必要ないとアドバイスされる現状こそ、
適正使用に反する状況です。
「適正使用」イコール「乱用防止」と考えられていますから、
緊急避妊の必要な状態についての予備知識を
ピルユーザーのほとんど全員が指導されていないでしょう。
服用者向け情報提供資料には何らの記述もありません。
「いつでも不安」か「いつでも平気」。
これは2種類の女性ではありません。
1つの裏表です。
「いつでも不安」な女性がやがて「いつでも平気」な女性に変わります。
「いつでも平気」な女性は心の片隅に「いつでも不安」な気持ちを持ち続けています。
最初は不安でもたまたま事なきを得る状態が続くと、
少しくらい大丈夫という気持ちになってしまうのです。
そして望まない妊娠をしてしまうケースが山ほどあります。
だから、「いつでも不安」な女性のうちに、
きちんと働きかけることが重要なのです。
各国では十代女性の避妊の敷居を低くする努力を重ねています。
「いつでも不安」な性の初心者の女性は、
性の教育をもっとも求めている人達です。
欧米では敷居の思い切り低い若者向けの性の相談施設が発達しています。
コンドームだけでなく、緊急避妊薬やピルが無償で提供されることも少なくありません。
私はそれを理想的だと考えています。
その私からみると偽「適正使用」推進は理想の逆です。
偽「適正使用」推進は若者を緊急避妊から遠ざけ、
教育の絶好の機会を放棄することになるからです。

もう一度繰り返します。
私は偽「適正使用」推進論に真っ向から反対です。
100万人の人に白眼視されようとも反対ですし、
100年経っても反対の気持ちは変わらないでしょう。

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