2013年3月31日日曜日

ピルを2錠以上飲み忘れたとき

前書き(2013.10.26追加)
この記事は「ピルとのつきあい方」のピルを飲み忘れた時の対処法記述について、
その背景を書いたものです。
詳しい服用法は「ピルとのつきあい方」でご覧下さい。
ピルの飲み忘れがあると、排卵リスクが高まります。
それを模式的に示したものが上の図です。
12時間以内の飲み忘れは誤差として無視してかまいません(参照12時間ルール)。
12時間を越える飲み忘れについては排卵リスクが生じ、
2錠、3錠・・・と飲み忘れ錠剤数が多くなるほどリスクが高くなります。
上の図はそれを模式的に示しています。
2錠以上の飲み忘れ(図では24Hより右)では、時間経過とともにリスクが上昇します。
このリスクにどのように対応するかが、ピルユーザーの避妊失敗を少なくする上で重要です。
現在、日本以外の諸外国では副作用の少ない緊急避妊薬がドラッグストアで店頭販売されており、価格も低価格です。
このような状況を反映して、2錠以上の飲み忘れには緊急避妊で対応する方法が主流となっています。
図に①で示したのはイギリスの緊急避妊ガイドラインですが、
緊急避妊の適応を2錠以上の飲み忘れとしています(参照日本の実情を無視したガイドライン)。
日本では緊急避妊薬の入手には病院での処方が必要ですしその価格も高価格です。
病院で処方を受けるまでの時間がかかればかかるほど、リスクは大きくなります。
そこで「ピルとのつきあい方」では、
飲み忘れたピルを使用して排卵リスクを低く抑える方法を紹介しています。
ところが、日本のピルのガイドライン・添付文書・服用者向け情報提供資料は全て、
24時間を越える飲み忘れでは服用を中止するように求めています。
服用を中止すれば、排卵リスクが時間とともに増大することは上の図からも明らかです。
これは明らかにトンデモ服用法です。
この服用法に従ってはいけません。
公的文書がトンデモ服用法なので、病院サイトなどの説明もほとんどがトンデモ服用法です。
そのことに目を付けたNPOグループが、「ピルとのつきあい方」攻撃のためにトンデモ服用法を利用しています。
彼らの無責任な言説に耳を貸さないで下さい。

なお、日本の緊急避妊ガイドラインは3錠以上の飲み忘れを緊急避妊の適応としています(図の②のライン)。
ピルの添付文書との整合性もない思いつき(実は政治的判断)なので、
ピルユーザーに緊急避妊が必要なケースについて情報提供されることは全くといってよいほどありません。
以上、前書きです。

ピルユーザーには必ず飲み忘れがあります。
この飲み忘れに際して、ピルユーザーにわざわざ妊娠しやすくなる方法を推奨してきたのが、
低用量ピル普及推進委員会なるグループです。
ピルユーザーを妊娠させるTWに注意
このグループに偉そうな事を言う資格はないと考えますが、
以下のような当サイト批判?を行っています。

某サイトでは
 12時間以上ならアウト
 24時間までの飲み忘れなら1日の飲み忘れの対処

2日になったら完全アウトと言いながら
 2錠服用→朝1錠(21錠目)/定時に1錠
 ・・・朝の服用の意味はわからない。

私のバイブルである低用量ピル適正使用マニュアルには
1週目の2日の飲み忘れの対処に関しては、
気がついたら2錠/翌日にも2錠を服用する方法も記載あり。
http://archive.is/fILxS

これについてコメントしておく事とします。

マナーの(法的な)問題

出所を明示せずに某サイトなど書くのは、著作権法違反です。
さらに、勝手な改変をしているのも著作者人格権の侵害です。
「1日の飲み忘れ」では不明確になるので、
当サイトは「1錠の飲み忘れ」のような表記法を採用してきました。
このグループは、このような著作権法違反を常習的に繰り返しています。

まともな批判になっている点について
1.朝夕(定時)の意味

①【気づいたときに2錠、翌日定時2錠】と
②【気づいたときに2錠、翌日朝夕(定時)各1錠】は、
基本的に同じ服用法です。
気づいたときに2錠のパターンは、
A 定時朝 気づいたのは定時より後の朝
B 定時朝 気づいたのは定時より後の夜
C 定時夜 気づいたのは朝
D 定時夜 気づいたのは定時より後の夜
のようなパターンがあります。
①の服用法でCの場合、1回目の2錠と2回目の2錠の間隔が開きすぎてしまう。
①の服用法でBの場合、1回目の2錠と2回目の2錠の間隔が短すぎて不正出血が起きやすい。
このような①の服用法の問題点を改善したのが、②の服用法です。
当サイト、②の服用法批判はためにする批判に思われます。

2.第2週への適用
2錠+2錠の服用法はミニ緊急避妊の考えで、排卵のリスクを応急的に回避するものです。
2錠以上の飲み忘れで排卵リスクが最も高いのは第1週なので、
第1週の飲み忘れ対応としては「低用量ピル適正使用マニュアル」と同じです。
第2週の2錠以上の飲み忘れで排卵リスクがほとんどないなら、
2錠+2錠の服用法を取る必要はない事になりますが、
実際は排卵リスクがあるので2錠+2錠の服用法を不可とする理由にはなりません。
2錠以上の飲み忘れには3錠4錠5錠・・・の飲み忘れもあります。
それに対して、2錠+2錠の服用法は非常に有効です。

欧米でピルは半年分または1年分まとめて処方されるのが普通なので、
ピルユーザーの手元に未使用のシートがいつでもある状態です。
一方、日本ではピルユーザーが未使用のシートを持たないケースも多くあります。
このような事情を勘案すると、すぐに新シートへの移行をアドバイスするのは、
現実的でないと考えます。

3.応急性

ピルユーザーの多くは飲み忘れに気づいたとき、とっさの対応を思い出せません。
服用を中止してしまうのが最悪です。
「2週までの2錠以上の飲み忘れなら、まず取り敢えず2錠服用する。」
この対応は開発途上国などの一部の女性にはとても難しい事でした。
(WHOガイドライン改訂2版の背景)
日本の女性なら全然問題ないでしょう。
この対応を取ってからゆっくり考えたり相談してよいのです。
ある場合には緊急避妊が必要なケースもあります。
その場合でもこの応急対応はプラスに作用します。

4.つけたし

低用量ピル普及推進委員会なるグループは当サイトの揚げ足取りに熱心ですが、
まずしっかり勉強して、それからピルユーザーのための活動をすべきです。
2錠服用を忘れたら服用中止などというトンデモ服用法のトンデモさが理解できないのでしょうか。
それとも、ピルユーザーが避妊に失敗してもへっちゃらなのでしょうか。
顔を病院へ製薬会社に向けるのを止めて、しっかりピルユーザーの方を向くようにしてほしいものです。

参照 図説 ピルの飲み忘れ


本稿の姉妹編 産婦人科医の犯罪的怠慢

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