2013年1月30日水曜日

減少に転じた?ピル普及率

ばらつきが大きすぎるピル普及率データ
オーキッドクラブが20~30代の女性400名に行った調査では、ピルの普及率は5.5%</a>でした。
首都圏の男女1000人を対象とした「SOD Sex survey 2012」では、ピルの普及率は8%でした。
おそらく、サンプルの偏りのために高めの数値になっていると思います。
「第6回男女の生活と意識に関する調査」は、16~49歳の男女3,000人を対象としたもので規模も大きくもっとも信頼できる調査ですが、直近のピル普及率は1.9%となっています。(ネット上に未公表/一部結果)
「男女の生活と意識に関する調査」は2002年から2012年まで偶数年に6回の調査が行われました。
各回調査のピル普及率は以下の通りです。
①1.6
②1.9
③1.8
④3.0
⑤2.3
⑥1.9

 
2012年調査では2004年第②回調査のレベルまで普及率が後退しています。
ピルの普及が伸び悩んでいるとの実感と符合する結果です。

岩盤の70%
これまで6回の「男女の生活と意識に関する調査」で注目しているのは、
ピルを「使いたくない」と回答する女性が一貫して70%強存在することです。
この70%強の女性について、
いわゆる「ピル推進派」は無知で偏見を持った70%と考えているように見えます。
だから、「正しい知識」を啓発することに熱心になります。
しかし、10年間啓発活動を続けても70%はびくともしません。
なぜでしょう。
「無知で偏見を持った70%」という認識自体が間違っているのではないかと私は考えます。
70%の女性と30%の女性では、
70%の女性の方がピルについての知識は乏しいでしょう。
しかし、ピルを普及すると活動しているNPOのメンバーがトンデモ情報を連発しているのを見ればわかるように、
両者の知識差は決定的なものではありません。
ピルについての知識差が70%の女性と30%の女性の区別になっているとは思えないのです。
「無知で偏見を持った70%」が微動だにしないのは、
実は彼女たちの方が主体的選択をしている女性だからだと考えます。
彼女たちの特徴は直観的な冷めた判断です。
これを別の言い方で言うと、
宣伝臭にはとても敏感であるとともに、
自らの体験に基づいて判断しようとします。
いくつか例えを上げてみましょう。

例1
「ピルの避妊効果はほぼ100%です。
コンドームの避妊は失敗が多いので、
避妊具と言うよりSTD予防具です。」
このような言説に対する反応は、
「これまでコンドームで別に不都合はなかったし、
ピルだって飲み忘れとかで妊娠すると聞いているのに、
良いことばかり言っているみたい。」

例2
「ピルを飲むと生理は軽くなるし、
卵巣がんや子宮体がんを予防する効果もあります」
このような言説に対する反応は、
「薬だから良い点もあるかもしれないけど、
良い点だけ言われても。
副作用だってあるかもしれないから、
ひとまずはパスしとこう。」

例3
「ピルで乳癌リスクが高くなることはありませんし、
ピルで肥るというのは神話です。」
このような言説に対する反応は、
「以前はピルで乳癌リスクが高くなると言っていたはずなのに、
今になってそんなこと言われてもなぁ。
それに医師の中でも意見が分かれているみたいだし。
ネットにはピルで肥ったとか痩せにくくなるとか言う話がたくさんあるのはなぜなんだろう?」

以上3つの例を挙げましたが、
70%の女性は「無知で偏見を持った70%」ではなく、
主体的に判断しようとする女性なのです。

避妊、避妊、そして避妊
「ピルで血栓症リスクが高まる!」
「ピルを服用すると肥る!」
「ピルは乳癌になりやすくする!」
ピルの歴史はこのようなネガティブ情報の波を跳ね返してきた歴史です。
このネガティブ情報を跳ね返してきた力は、
ただ一つです。
<strong>「確実な避妊をしたい!」</strong>でした。
「ピルで血栓症リスクが高まるってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
「ピルを服用すると肥るってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
「ピルは乳癌になりやすくするってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
ピルの服用を選択する女性の主体的判断に、
誰も口を挟むことはできませんでした。
「確実な避妊をしたい」との切実な思いに対して、
しっかり応えようとしてきたのがピルの歴史です。
1970年代の日本でピルが爆発的に普及したと書きました。こちら
青森県のある地方ではピルが驚くほど普及し定着しています。
卵巣がんが減少すると訴えたからではありません。
「確実な避妊をしよう!」という訴えと「確実な避妊をしたい!」という思いが重なったからです。
これはどこの国でも同じ事なので、
ピルが副効果のために普及した国はないと書いてきました。
日本のピルの13年間は、「確実な避妊をしたい!」との思いを持つ女性に訴えるものではありませんでした。
13年間妊娠リスクを高める服用法を放置してきました。
日本のピルの普及が低迷するのは、
ある意味当然のことのように思えます。

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