2013年1月30日水曜日

大学入学者は女性がんリスクが高くなるかもしれないという話

最初に断っておきますが、大学に入学したとしても乳がんや子宮頸がんのリスクが高まるわけではありません。
そんなことは当たり前のことなので、
誰も調査しませんし調査もありません。
しかし、実際に調査してみると、
大学に入学すると女性がんリスクが高まるという結果が出ないとは限らないのです。
例えば、大学入学経験者と非経験者の乳がんリスクについて調べたとします。
すると、大学入学経験者と非経験者の乳がんリスクに差がないことがわかるでしょう。
しかし、大学入学経験者の20年経過時点の乳がんリスクを調べると、
大学入学経験者の乳がんリスクが高くなるかもしれません。
ええっ!!と思われるでしょうが、
そのような結果が出ないとは限らないのです。
なぜかというと、大学入学経験者の20年経過時点というのは、
38歳前後に集中しています。
もし38歳前後が乳がんの好発年齢だとすると、
大学入学経験者は20年経過時点で乳がんリスクが高くなるように見えます。
以上は、ざっくりした例えですが、
そのような視点でピルと発がんリスクの関係を見てみましょう。
以下は、ピルと乳がんの関係について説明したページです。
まず表の見方を説明しましょう。
死亡を例に取ると、
「相対リスク(95%CI) 」が0.90(0.74-1.08)となっています。
ピルユーザーと非ユーザーのリスクが同じであれば、
1.0ですが0.90となっているので、
ピルユーザーの方が死亡リスクが低いというデータです。
しかし、カッコの中を見ると(0.74-1.08)となっています。
数値が1.00を挟んでいます。
1.00を挟む場合には統計的に有意とはいいきれないことになります。
これが表の見方です。
統計的に有意なデータは太字で示しています。
ピルユーザーと非ユーザーを較べると、
乳がんリスクに差は見られません。
しかし、ピル服用経過が15-20年の女性だけに限ってみると、
2.45倍乳がんリスクが高くなります。
逆に20年以上経過するとピルユーザーの乳がんリスクは半分程度に低下します。
このような奇妙な結果になるのは、
ピルユーザーの服用開始年齢が一定年齢に集中しているからではないかと想像しています。
ピルの服用開始年齢は似通っているので、
ピル服用経過年数は年齢層と重なっている可能性があります。
ピルユーザーは、ピル服用経過15-20年で乳がんリスクが高くなるのではなく、
ピル服用経過15-20年で乳がん好発年齢に達しているのではないかとの想像です。
このように想像すると、大学入学経験者の入学20年経過後の乳がんリスクは高い、
などと言うデータが得られるかもしれません。
なお、日本乳癌学会は一貫してピルが乳癌リスクを高めるとの見解を表明しています。
それを受けて、
「このガイドラインがある以上は、正統派の乳腺診療を行う医師はピルを安易にピルの使用を認める事はありません」
(ベルーガクリニック)となるのですが・・・。

ピルと乳癌の関係については、肯定否定両論があります。
意地悪い見方をすると、業界のバイアスが関係しているようにも思えます。
それはさておき、次ぎに子宮頸がんリスクについて見てみましょう。
子宮頸がんリスクについての説明ページはこちらです。
まず、子宮頸がんリスクの表をご覧下さい。
乳癌リスクの表と非常に似たパターンなのがわかります。
つまり、死亡や罹患で見ると有意な差はないのに、
経過年数でグルーピングすると有意な差が生じています。
これも上の乳癌リスクについての説明で述べた年齢グルーピング効果が関係しているように思えます。
しかし、乳癌リスクとの違いも見られます。
子宮頸がんリスクでは統計的に有意でなくても、
有意に近い95%CIで相対リスクが高くなっています。
この点について考えてみましょう。
表ではピルユーザーと非ピルユーザーの相対リスクを較べているのですが、
非ピルユーザーの中には異性間性行為のない人も含まれます。
このことがピルユーザーの子宮頸がんリスクを高めに見せているように思えます。
もし、コンドームユーザーと非コンドームユーザーを較べてみても、
同じような傾向が現れるかもしれません。
ピルユーザーにコンドーム使用を強力に推奨する文脈の中で、
ピルユーザーの子宮頸がんリスクが高くなるとの言説が横行しています。
コンドームの使用で子宮頸がんリスクが低下するとのデータは見たことがありませんが、
もし最大限の予防効果があるとしても10万人中15.48人の罹患が11.19人に低下する程度です。
コンドームで子宮頸がんリスクを予防できるかのような幻想を振りまくよりも、
HPV予防ワクチンや定期検診の普及に取り組んだ方が現実的であるか、と思うのですがいかがでしょうか。

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